研究開発領域

研究開発領域 生分解性バイオ・医用関連器具機材の創製

ポリ乳酸などの生分解性高分子(ポリマー)は、環境に優しい材料として注目を浴びていますが、強度や耐熱性の課題が指摘されています。 当社では、これまで困難であった生分解性高分子材料への放射線滅菌を可能にし、力学的強度、耐熱性、耐久性を付与する新たな技術を確立しました。 現在、この技術を活用した生分解性樹脂の新しい用途の開発に取り組んでいます。

技術概要

一般的な生体材料の滅菌方法としては、高圧蒸気滅菌、エチレンオキサイドガス(EOG)滅菌、放射線滅菌が広く用いられています。 高圧蒸気滅菌法は、比較的簡便なオートクレーブを用い、121℃(飽和蒸気圧1.0㎏/cm²G)、20分の条件で実施されることから、高温高圧に耐える材料に用いられており、金属やセラミックスに比べ耐熱性に劣る有機高分子材料には用いられていません。 また、放射線滅菌法では、架橋型高分子とされるポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニール、ポリカーボネート、ポリスチレンや合成ゴムなどには、放射線による滅菌が可能とされ、広範囲に用いられてきましたが、崩壊型高分子とされるポリメタクチル酸メチル、テフロン、ポリイソブチレン、コラーゲン、セルロース及びポリ乳酸等の生分解性高分子などでは、放射線照射により高分子鎖が切断され、分子量低下と力学的性質の劣化を起こすとされることから、EOG滅菌法が実施されています。
しかしながら、EOG滅菌法は、材料の劣化を抑えるという観点においては他の滅菌法に比べ最も良いとされていますが、EOG滅菌後の医療材料中にEOGが残留し、生体に対して悪影響を及ぼすことが指摘されており、敬遠される傾向にあります。
このような状況の下、当社では、高圧電線用のポリエチレン架橋剤として用いられているトリアリルイソシアヌレート(TAIC)を生分解性ポリマーなどに添加することにより、効率よく架橋を形成し、フリーラジカルが残らないようにすることで、放射線照射による劣化を防止することを発見しました。
従来放射線滅菌ができなかった生体内分解吸収性医療材料及び非吸収性の医療材料に適用できるだけでなく、食品包装材などの一般工業材料としても幅広く応用が可能な技術と言えます。